2005年12月15日(木)
第75回 東大阪に社会企業家の父 (2005.12.15)
映画『ALWAYS三丁目の夕日』を観ると、育った年代が同じであり、懐かしさと、日本人がどこかで大切な物を忘れて来たのではないかと思いました。
こんな現代でも、あの「三丁目の夕日」の一端を感じる場所があります。
それは、大阪の八尾にあるテルモ工業である。
周辺地域には、今なお金属加工会社が立ち並んでいて、グラインダーの音やスポット溶接の火花がちり、あの臭いがするのです。
小学校の頃、下校途中などで町工場の前を通った時のあの臭い。高校時代、機械実習の作業服にしみ付いたあの臭い。父親も同じ臭いがしていたなあ~。
タイムトンネルで昔に戻ったように感じさせる地域であり、臭いを嗅ぐだけで懐かしさのあまり、涙が出そうにもなる。
そんな臭いがする道を歩き、路地に入ると長屋の工場が建っている。
一つの工場が間口数メートル。全て金属加工を仕事としている長屋工場である。
日本の物作りが中国などにシフトした関係か、シャッターが閉まっている工場も少なくない。
ここが、20世紀の高度成長を支えた現場であり、技術立国、日本を築きあげたベースになった地域なのだが、現状を目の当りにすると、これが今の日本における問題点の縮図と言っても過言ではないと思う。
政治家は、この現実を見に来てほしいですね。
長屋工場の中間あたりに、「テルモ工業」と書かれている看板はあるが、あまりにも小さいので、初めての人はその前を行ったり来たりしてしまう。
その工場には、シャッターの横に小さなドアがあって、そのドアに毎月第三土曜日には人が吸い込まれるのである。
普段着の人、スーツを着ている人、近くの工場から来たのか作業服を着ている人、学生からお年寄まで、OLもいれば、主婦も、どんどんと人を吸い込まれていく。
その人たちは、八尾周辺だけではなく、近畿はもとより全国から集まっているのである。
朝の11時頃から一人、また一人とそのドアの中に吸い込まれるように入って行き、そのうち工場内は人、人・・・のすし詰め状態になり、たまらなくなって外に出て来る人もいる。
出てきた人たちが輪となり、外で会話が弾んでいる。
そうしていると、「お先に」と言って帰る人もいれば、「こんにちは」と言って来る人もいる。
なんと、不思議な光景だ。
ドアを開けて中に入ると、もっと不思議な光景を見ることになる。
人ですし詰め状態になっているが、座る椅子はなく、片手にビールなどの飲み物を持ちながら立ち話しをしている。
一対一の会話もあれば、数人が輪になって、ここでも話しが弾んでいる。
身動きがとれないこの距離感が逆に話しが弾むのかもしれない。
昨日の阪神、ビジネスの紹介、美味しい店の話し、下ネタなどの話しが飛び交っているのである。
ここまで書くと、何か怪しげな宗教団体か何かに勘違いされそうなのですが・・・宗教団体でもなければ、政治団体でもなく、その会はテルモ会と呼んで全国から多くの人が集まって来るのです。
テルモ会は、規約もなければ、名簿もない。始まりの挨拶もなければ、終わりの挨拶もない。 始まりの時間は、準備の関係もあるので11時頃から始まるのだが、終わりは決まっていない。人が帰っていなくなるとその日のテルモ会は終わりとなる。
昔は、夜中まで人が帰らなかったこともあったらしい。。。
私は、時間の関係と立ちっぱなしで足が痛くなるので、15時頃にはテルモ会を後する。
しかし、その時間でも新たに来る人もいて、工場内のすし詰め状態は続いている。
工場内をもう少し説明すると
ドアを開けて中に入ると中央が通路で、両サイドに工場の設備、備品が置かれていています。入ったすぐ左手には、日本酒と湯かんセットが置かれている。その周辺には自然と、日本酒好きな人が集まっている。
その奥には、揚げ物の電気フライヤーが置いてあり、誰かが自然とその日の担当として揚げている。
揚げる材料は、工場の奥に大型冷蔵庫があり、その冷凍庫に用意されているものを順に取ってくるのである。
出来上がるころには、箸を持った手が伸びてくるのだが、何せ、すし詰め状態なので、少しタイミングを逃すと食べることが出来ない。
食べようと思えば、揚げ上がるころを見計って、満員電車の出口に近づく要領で電気フライヤーに近寄らないと行けない。
ドアを開けて右手には、キャベツ、玉ねぎ、サツマイモ、ニンニクなどの野菜が下準備も終わり、焼かれるのを今かと待っている。
大量の野菜だが、聞くところによると社長の奥様が、朝早くに起きて準備をされているとの事。
その横には、大型の鉄板焼きが置いてある。
この鉄板の説明は、次回にでもするとして、ここで焼く作業者は自然と固定化しているようだ。
先ほどの大型冷蔵庫には、ステーキ用の肉、焼き鳥、焼きそばが大量に入っている。それを順番に焼いて行くのだが、「焼きそば出来ました」と言った瞬間になくなってしまうのである。
ステーキも焼き鳥も同じ状態である。
特別な食材ではなく、スーパーで売っている普通の食材ではあるが、どうも味が違うのである。
あの、大型鉄板焼きに秘密がありそうだ。
この工場は、冷房も暖房もない。夏は扇風機3台が廻っているが蒸し風呂になっている。しかも、鉄板焼きの担当は汗が止まらない。
この汗が、味加減しているのではないかと思うほどである。
一番奥の左手には、二階に上がる急な階段がある。
二階の応接では、11時頃からテルモ工業の社長(若松社長)が初めて参加した人に、この会の事、想いなどを話されるが、この応接もすし詰め状態なので、早く行き場所を確保しないと話しを聞くことが出来ない。
この会のすごいのは、料理は食べ放題、大型冷蔵庫にビッシリと入っているビールも飲み放題で、全て無料。そして、25年間も毎月開催していることである。
私は創業後、ある人の紹介でこのテルモ会を知り、それから四年半休まず通っています。
このテルモ会には、色々な目的を持って来る人がいる、ビジネスのネタを探しに来る人、多くの人と名刺交換をしてビジネスに活用したい人、人と話したい人、美味しいステーキを食べたい人など参加条件は全てOK。
人と人が出会い、その理念がつながったら良い。
その場所を提供しているだけと若松社長は軽く話されるが、25年の歴史には重みを感じます。
不思議と、清々しい気持ちになり、一ヶ月の疲れが取れて、来月まで頑張ろうと思いながら帰路につくことが出来るのである。
シャッターのドアを開けて挨拶をすると、若松社長は「おう。植木君よく来たなあ~。ゆっくりして・・・」と手を握って、まるで息子が実家に帰った気持ちにさせてくれます。
帰りは、「おう。帰るか。。。来月もおいでや・・・」と手を握って、ドラ息子を見送る光景である。
この瞬間は、丹後(京都府)にいる親を思い出すのである。
親不幸しているなあ~。
若松社長は私に、『志を持ち続けると、一人一人の理念がつながり、社会が良くなり、事業が成功することになる』
最初は、この意味がもう一つ理解できなかったが、会を重ねることによりその意味が、大きなものになって行くのを感じたのである。
実は、後にこの言葉が私の人生を大きく変え、当社を浮上させる事になったのです。
▼カンボジアへの活動は、若松社長の言葉が原点だった。
講演などで、カンボジアへの活動の話しを行う場合、分かりやすく話す必要があるため、カンボジアへの活動家と知り合い、文房具が不足していることを知り。。。。文房具、学校を寄贈したと話しています。
実際は、若松社長の言葉があったこそ、活動家との出会いから一年が経過した後でも、想いを実行できたかもしれない。
もし、若松社長との出会いがなければ、カンボジアに支援活動もしなかったと思いますし、知名度も上がらずに他のベンチャーと同様に失敗事例の一つになっていたかもしれません。
▼テルモ会の終わりが近い
毎年12月は、テルモ工業ではなく、近くの店で鍋を食べながらの忘年会になります。
今年も8日に開催されたので参加してきました。
若松社長の挨拶で、9月から25年目に入っています。四半世紀も行ったので、区切りとして来年の忘年会でこのテルモ会を終わりにしたい。。。
集計すると約26,000人にもなり、その中には一千億企業の経営者になった方もおられる。
理念を持ち継続することにより、その理念がつながり、良い結果がたくさん生まれたと思う。
そして、20世紀は、公害など地球をいじめてきた、再生させることが私たち20世紀に生きた人間の使命と思っている。。。。省略。
寂しい言葉を聞いてしまった。 来年12月に実家はなくなると同じ話しである。
実家だけではない。実家に遊びに来る親戚、町内の人たちとも会えなくなるのです・・・
しかし、四半世紀も長きにわたり、社会のため、地域のため、中小企業、そして地球のために場所と食べ物を提供して頂きましたので、残念ですが・・・・
思うのに、この東大阪の地から社会起業家を誕生させたのは、まちがいなくテルモ工業の若松社長である。
そして、私は何をすれば、若松社長にご恩返しになるのか、忘年会以降ず~っと考えていますが、今のところ見当たるものがありません。
せめて、約26,000人の参加者にテルモ会が12月で終わりである事だけでもお伝えしたいのですが。。。
1/26,000人の方へ
この事を1/26,000人の方にメール転送又は、ブログなどでお知らせ下さい。
宜しくお願い致します。
Written by 植木 力 (株式会社カスタネット 代表取締役)

投稿者 10:12 | コメント(0) | トラックバック(1) | コラム
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